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コーディネーター 青木由香|PAPESKY Interview

, 2015/12/16

笑顔たっぷり、人懐っこく、親切で、おせっかい。たった2泊3日の初訪問でそんな台湾の人々にすっかりまいってしまい「この人たちのなかに埋もれて暮らしたい!」と住み着き、早十数年。実際にお会いしてみると、冒頭の愛すべき台湾的人柄は(おせっかいかどうかはさておき)青木由香さんそのものなのだった。

―台湾に暮らすようになったきっかけを教えてください。

私、バックパッカーだったんです。あっちこっち行きながら、住む場所を探していて。台湾には半年くらいだったらいてもいいかなと思って、当時30前で、何か勉強するっていう理由があったほうがいいなということで、足裏マッサージを学ぶ名目で来たんです。

しばらくいたんですけど、美大を卒業しているもので絵を描く仕事への思いもあって、ある台湾人に日本に帰るって話したんです。なんで帰るんだって言うから、こっちじゃ絵を描く仕事ができないからって言ったら、じゃあ場所を提供するから展覧会をやれって。そこで墨絵の作品を制作して展覧会をやったら、安かったのもあるんですけど、全部売れて。そのときにいろいろな人と知り合って、おまえおもしろいから台湾のことを本に書けと言われ。本を書いたこともなければ原稿さえ見てもらってないのに、台湾の出版社と契約しました。

それで出た『奇怪ねー』が売れちゃった影響で、そのころはよくテレビに出ていました。テレビ番組までもたされちゃって(笑)。でも有名になって、人間不信や疲れで、ちょっとした引きこもりに。もともとテレビの仕事に興味があるわけではなかったので、帰国しようかなというときに、台湾のことを紹介する日本のラジオ番組(『楽楽台湾』)の話をもらったので、まだしばらくいることになった、という経緯の現在です。

―コーディネーターの仕事もたくさんされていますね。

松浦弥太郎さんと若木信吾さんのアテンドから始まりました。そこから若木さんが台湾の原住民の映画(『トーテムSong for home』)を撮りたいということで、そのコーディネートを担当して。それとは別に、日本でガイドブックを出していたので、日本の雑誌の編集者から依頼が来るようになりました。

―ということは、台湾で何かやってやろう!という気持ちがあったというよりは、まわりの人にあれをやれ、これをやれと次々と言われ、それに応え続けている感じなんですね。

そうそう。足裏マッサージをちょっと勉強したら帰るつもりだったから(笑)!

―でも、それまでもバックパッカーでいろんな国に行かれてたんでしょう?そこでは留まらなかったわけですよね。

2ヶ月くらい滞在した国もあったけど、住もうとは思わなかったな。台湾もノーマークだった。バックパッカーからすると、ちょっと甘っちょろい感じ。シリアとかヨルダンなんかに行くほうがかっこいいみたいなね(笑)。でも、友だちに誘われて来てみたらハマッてしまって。

―そのころと現在では、日本における台湾観がずいぶん違うのでは?

全然違~う! 台湾の人たちが日本好きっていうことを当時の日本人は知らなかったんですよ。片想いみたいだから、それを両想いにしたいと思って、台湾のいいところを紹介したいと思ったんです。

―台湾の人たちは、日本のどういうところが好きなんでしょう?

きちんとしているところ。私はべつにそうは思わないんですけどね。時間を守ったり、隣近所の玄関先まで掃除したり、ゴミをちゃんと捨てたり。だけど、たとえば電車で席を譲るなんていうのは台湾のほうがすごい。子どもやお年寄りが来ると車両中の人がガバッ!と立ち上がって、こっちに座れ!と(笑)。

子連れでごはんを食べにいくと、お店の人が子どもの面倒を見てくれるから、私は家にいるときよりゆっくり食べられます。子どもお断りっていう店はまずない。あるとしたら日本人がやってる店だね(笑)。

―原住民のバンドを支援する活動も、台湾のよさを紹介したくて始められたんですか?

べつに原住民に特別興味があったというわけではなく、この人の考え方がいいな、やってる音楽がいいな、と思った友だちが、原住民だったの。

―『トーテムSong for home』の主人公でもあるスミンさんですね。具体的にはどんなことをされたんですか?

東京の小さいカフェや自分の本のイベントついでなんかで、民族衣装を着たスミンが故郷の村の話や文化、暮らしのことを話して、演奏する。最初はふたりだけで、手弁当で。私の実家や知り合いの家に泊まったり、若木さんにカプセルホテルの券をもらったり(笑)。だんだん仲間が増えてきて、もう7~8年やってるかな。

―儲けやビジネス目的ではなく、海外から人を連れてきてイベントするってそうとう大変なことだと思うのですが、そこまで突き動かされたのはなぜですか?

私、自分の故郷に対してなんの思いもないんですよ。でも原住民の人たちは、故郷への思いがすごく強い。田舎だと生活できないからとか、やりたいことができないからっていうので台北に住んではいるんだけど、隙あらば故郷に戻っちゃう。で、そんなにすばらしいと言っている場所がどんなもんかと思って見にいくと、べつにたいした場所ではないんですよね。普通の田舎じゃん、みたいな(笑)。だけど、両親や祖父母の教えをとても大事に思っていたり、なんてことのない村の食べ物をすごく嬉しそうに食べていたりするのを見て、自分はなんなんだろうって思っちゃって。羨ましいプラス、これだけ他人に自信をもって自慢できる大事なものがあるって、すばらしいなって。

それについてもっと知りたくなって探っていくと、そこがいいというよりは、その人の人間性がすごい純粋なんだってことに気づいたんですよね。だから、こんなにまっすぐ育っている純粋な人たちがいるっていうことを、みんなに教えたい!と思って。若木さんに話したら、ドキュメンタリー映画を撮るって言い出すし。

あるとき東京の書店で場所を借りてやったライヴでは、お客さんは本を目的に来てる人たちだから、こっちをあんまり気にしてくれないんですよ。でも、スミンは自分で感動しちゃうタイプだから(笑)、ボロボロ泣きながら歌ってると、だんだんまわりの人が手拍子しだして、最後には店中の人が集まって、みんなで感動しちゃってるんだよね。言葉が通じなくても、その場をみんなで共有できる。そういうのがおもしろいから、やってるのかな。それにしてもよくやったよね。たぶん暇だったんですよ(笑)。

台湾のことを紹介したいっていう気持ちがあったから。でも、おもしろい人たちを大勢連れてこられるわけじゃない。音楽だったら、言葉が通じなくてもわかるじゃないですか。

―たとえ知らない人でも、幸せな気持ちになってほしいという思いがあるんでしょうか。

っていうか、いいものを人に紹介するのが大好きなのよ!

―その思いの延長線ともいえる新刊『台湾のきほん』がこの11月に日本で発売されました。

台湾好きの人たちは、ガイドブックに掲載されているような店はとっくに知ってるんですよね。なので、ちょっと長く滞在するとしたらいろいろぶち当たる問題。病院や学校に行くとか、銀行で口座を開くとか、不動産を借りるとか。ためになることをまじめに書こうと思ってたんだけど、執筆期間が長すぎて、どんどん国のルールとかが変わってきちゃって(笑)。その人の置かれている立場によってビザの取り方なんかもずいぶん変わってくるし、あまりに複雑なので、そのへんは概要を押さえるまでにして、あとは自分が引っ越すときにどういうトラブルがあったか、なんてことを書いています。台湾人って、引っ越し手伝うって言って、来ても手伝わないんですよ。そばに寄り添って、お菓子食べながら見てるだけなの(笑)。

―気持ちで応援してる(笑)。

それに懲りてからは引っ越し屋さんにお願いするようになったんだけど、原住民の引っ越し屋さんっていうのがいて、5階からだって洗濯機でもなんでもおんぶして、歌いながら運んじゃう。もう3回頼んでますけど、そういうのを紹介したり。あと、銀行の入口にいる警備員がすべてのお客さん対応をしていて、すごく親切。だから銀行ではまず警備員を探すといいとか。「日式」って書いてある日本料理屋に入ると、ぶ厚くてぬるい刺身が、蛍光黄緑の粉わさびと醤油をドロドロに溶いてセメントみたいになったのと一緒に出てくるとか(笑)、ルールといえないようなルールを書きました。台湾の時間の流れや空気感が伝わる本にしたかったんです。

―本も書けば、展覧会もやり、コーディネートもオーガナイズもやり…。

マッサージも(笑)。脈略ないよね。

―いえいえ、そこに”人”というキーワードが入ると、じつはけっこうつながるのかもしれないと思いました。

ああ。人が好きだし、けっこうおせっかいだよね! あの人、たぶん今これが知りたいだろうなとか、あの人にこれを紹介したら喜ぶだろうなとか。そういうのが、好きなのかも。
 
青木由香(あおき・ゆか)
神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業。台湾で出版した『奇怪ねー』がベストセラーになったことがきっかけでテレビで引っぱりだこになり、台湾で有名な日本人に。現在はFM16局でオンエアされている『楽楽台湾』のパーソナリティを務める他、今春には台湾と日本の雑貨や作家ものを扱う自身の店「你好我好」を台北にオープン、11月には新刊『台湾のきほん』(東洋出版)が発売されるなど、台湾をテーマに自由自在に活動している。 www.aokiyuka.com
 
» PAPERSKY #49 Taiwan | COOK Issue

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