Menu Links
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi
  • Shusaku Hayashi

屋根の下の温もり|世界の郷土菓子をめぐる自転車旅 002

, 2015/05/24

悪魔の囁きが聞こえる。「ヨーロッパの鉄道には自転車用の車両があるじゃないか。それを使えば隣町まであっという間じゃないか」。想像を超えた自転車の重量に僕は心が折れそうになって、スタート地点からたった500mの鉄道駅で早くもへたり込んでしまっていたのだ。けれども声高らかに出発したほんの30分前のことを思えば、さすがにいきなり電車に乗るわけにもいかない。僕は重い腰を上げ再び自転車にまたがった。「ああ、やっぱり重い。明日は筋肉痛だな」。この日は30km先にあるスイスのバーゼルを目指すと決めていた。普通なら自転車で2時間ほどの距離だろうけど、リュックひとつでサイクリングするのとはわけが違う。荷物にハンドルを奪われながら、恐る恐るペダルを漕いで、半日掛りでスイスに辿り着いた。国境には形ばかりの簡易ゲートが立っているものの、係員もいなければ、パスポートコントロールもなかった。ずいぶんとあっけない。

手持ちのお金は1700ユーロ、日本円にすると22万円くらいしかない。上海までの10,000kmを完走するのにざっと1年半と見積もると、1日に使えるお金はせいぜい3ユーロ(400円)程度だろう。限られた所持金はなるべく郷土菓子の研究費に使いたい。「しかたない、宿代を削るしかないな」と判断して、地元の人の家を直接訪ねて「泊めて下さい」とお願いして回ることにした。言葉が通じないから筆談で挑戦してみる。英語、ドイツ語、クロアチア語にルーマニア語。合計12の言葉を書き連ねたスケッチブックを手にして、僕は一軒家が建ち並ぶ通りへと足を伸ばした。『ピンポーン。インターホンが鳴って外に出ると、見知らぬ外国人がスケッチブックを手にして、宿を探しているのだと自己紹介を始める。』こんな場面に出くわしたら……僕なら断ってしまうかもしれないな。怪しすぎるもの。だから、もちろん簡単に宿が見つかるとは思っていなかった。それでもあまりに断わられ続けると、流石に不安にもなってくる。徐々に日が傾き始めたバーゼルの街は、半袖1枚で過ごすには肌寒くなってきた。弱気になりつつピンポンを押し続けること15軒目、ようやく親切なご家族が受け入れて下さった。

迎えて下さったのは音楽家のお父さんと学生姉妹。お出かけ中のお母さんを待っているところだという。3人は驚かしてやろうとニヤニヤしていたけれど、僕はお母さんに追い出されないかなとちょっとだけヒヤヒヤしていた。こんな時間から宿探しをやり直すなんて真っ平だから。けれども僕の心配をよそに、しばらくして帰ってきたお母さんは温かく迎え入れてくれて、余っていた部屋をひとつ使わせてくれた。木製のベッドだけがポツンと置かれただけの部屋だったけれど、屋根の下で寝られるのはありがたかった。せめてものお礼になればと、お宅のキッチンを借りて、きな粉とケシの実の団子を振る舞った。粉と水とを合わせて、蒸して、練って、茹でる。「この粉はスパイス?」「これは何からできてるの? コーン?」。ぎこちない手つきをしながら、4人は見慣れない食べ物を面白がって平らげてくれた。地元の人と交流するのって思った以上に刺激的。こうして、昼間は和菓子の食材をバッグに詰めて自転車をこぎ、夜は地元の人と語らい土地の文化に触れる日々が始まった。毎晩毎晩がとても貴重な体験となった。次の目的地はミュンヘン、あの人に会いに。

ライター:林周作/郷土菓子研究社
http://www.kyodogashi-kenkyusha.com/
エディター:南口太我

Tags:









クレーの心に刻まれた、三角形の山ニーセン

ベルン州南部の高地帯ユングフラウ地方に「ニーセン」というちょっと不思議な山がある。なぜ不思議なのかと… »STORY

さまざまに活躍する籠|暮らしに生きるサルデーニャの手仕事(1)

島の中東部、オリスターノより少し上に位置するサン・ヴェロ・ミリス。伝統的な籠を編む女性がいるという情… »STORY

少年たちの遊泳場から、夜は大人のバーに|Mannerbad Schanzengraben

前述のFrauenbadiとは反対に、こちらは照れ屋な男性のためのリド。大通りから一本入った路地裏に… »STORY

Tree People -「木の民」たちが守ってきたもの

生活の場、道具の資源としてだけでなく、人々の心を支え続けてきた森の木々。フィンランド中の森を訪ね歩き… »STORY

夜のライブで盛りあがるリド|Seebad Enge

日が沈むと、チューリヒのプールサイドはまた別の表情を見せる。FrauenbadiやSchanzeng… »STORY

木々に支えられてきた「森林先進国」として|Lusto & Luke

国土の75%を森林が占めるフィンランドの人々にとって、森はつねにすぐそばにある心の拠り所であり続けて… »STORY

サウナはフィンランド人の大切な社交場|Finnish Sauna

フィンランド人のライフスタイルを語るうえで「サウナ」を外すことは、日本人の生活から「温泉」を外すくら… »STORY

おいしいがつなぐもの

去年の夏休みは、クロアチアの南端のイストラ半島と、フィンランドの西の町キュロを訪れた。ヨーロッパの南… »STORY

ENALLOID × PAPERSKY “Through the Lens” 003 若木信吾

PAPERSKY本誌との連動企画「ENALLOID × PAPERSKY “Through the … »STORY

Vete-Katten|FIKA café in Stockholm 10

ヨーロッパらしいクラシックなティーサロンのたたずまいを残す、1928年創業の老舗ベーカリーカフェ「V… »STORY

ENALLOID × PAPERSKY “Through the Lens” 001 若木信吾

今号よりスタートした、PAPERSKY本誌との連動企画「ENALLOID × PAPERSKY “T… »STORY

Bageri Petrus|FIKA café in Stockholm 9

週末ともなると店の前に長蛇の列ができるほど、パンのクオリティに定評のあるベーカリーカフェ。今回の滞在… »STORY

Hotel Allegro Bern|眺めのいいスイスのホテル 5

ベルンはスイス連邦の首都であるとともに、旧市街の美しい街並みが1983年にユネスコ世界遺産にも登録さ… »STORY

フランス、古今の岩登りを巡る旅

アトリエ小屋の本棚に、一冊の古い本がある。 『雪と岩』 著者の名前はガストン・レビュファ。日本で… »STORY

屋根裏部屋の誇り

野地板と呼ばれる4mの杉板を三角形に組み合わせて垂直に立てる。下に置いた新聞紙に火をつけると、発生し… »STORY

UNITED ARROWS green label relaxing GREEN TRAVEL vol.12 Sweden

UNITED ARROWS green label relaxing × PAPERSKY「GREE… »STORY

Sophies Canelé|FIKA café in Stockholm 8

ストックホルムの街にはちょっとめずらしいカヌレの店を発見。2年前にオープンしたばかりというここは、オ… »STORY

Kaffe|FIKA café in Stockholm 7

オシャレ過ぎても居心地が悪い。少しの“いなたさ”を求める人におすすめのカフェ。もともとこの近くでカフ… »STORY

6/5/4|FIKA café in Stockholm 6

インディペンデントでクリエイティブな店が集まるソーホーエリアの一角にあるサーフショップ。そのたたずま… »STORY

Drop Coffee|FIKA café in Stockholm 5

カフェから10分ほどの場所にロースタリーをもち、扱う豆はすべて実際に産地を訪ねて見極めたもののみ、フ… »STORY

Hotel Schatzalp|眺めのいいスイスのホテル 3

美しいアールヌーヴォー様式の建造物で、1900年にこのホテルが建てられて以来、今もそのクラシックな雰… »STORY

Green Rabbit|FIKA café in Stockholm 4

次々と新しいレストランがオープンし、食のシーンがますます元気なストックホルムで、ミシュランの2つ星を… »STORY

Petrus Jakobsson|フィーカの時間を彩る4人のシェフたち 4

「子どものころから手づくりの食べ物に囲まれて育ちました。特にフィーカは思い出深くて、子どもながらにコ… »STORY

Elisabeth Johansson|フィーカの時間を彩る4人のシェフたち 3

店はもたず、雑誌やテレビなどを中心にフードスタイリストとして活躍しているエリザベス・ヨハンソンは、母… »STORY

Per Olsson|フィーカの時間を彩る4人のシェフたち 2

ストックホルム中心地から地下鉄で30分ほどの郊外に、昔ながらのたたずまいをしたカフェ「Nya Lun… »STORY

Conrad Tyrséns|フィーカの時間を彩る4人のシェフたち 1

ストックホルムから南へ200kmほどの距離にある、ゴッドランド島ヴィスビーで生まれ育ったというコンラ… »STORY

name
バーゼル
place
スイス
  • world & japan maps

    worldmap_banner_s

    japanmaps_banner_s

  • Papersky iPad iPhone

  • soundtrack

    sound_banner

  • mizuno

  • peakperformance

  • URD Craftsman Series

    urd-craftsman-banner

  • Lee Riders

    leeriders

  • green label traveling partner

  • tour-de-nippon

  • luca-mon

    lucamon-banner

  • Hike & Bike

  • globe walker OLD JAPANESE HIGHWAY

  • cyclemaps

  • PAPERSKY VIDEO

    paperskyvideos_banner

  • tourcolumn banner_03